住まいづくりに役立つ情報満載
 地震に強い家作り  仕事対策部 中村文彦
第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回第8回第9回第10回第11回第12回第13回
第1回  はじめに 〜基礎知識をつけよう〜

 これから日本では政府の地震調査委員会から震度6弱以上の強い地震に見舞われる確率が高いとして発表があり、「東海地震は今後30年内におこる確率が84%」というショツキングな記事も朝日新聞に載りました。  震度6弱の地震とは耐震性の低い住宅では、倒壊するものがある、耐震性の高い住宅でも、壁や柱が破損するものがある、というほど大きいものです。
 それに付け込んで最近は、耐震工事と称して、耐震機能とはかけ離れた工事で、多大な金額を取る「悪徳業者」が増えています。 
 そこで私たちは、真の「地震に強い家づくり」とは何かの基礎知識を身につけて、進んで耐震住宅に取り組んでいきます。
一度、大地震が都市部で発生すると、多くの命が奪われ、経済的ダメージも大きいのですが、それを事前に予防すれば、復興にかける費用から比べて僅かですむのです。
 特に築20年以上の住宅リフォームでは、住民は部屋の内装や設備など目先の事ばかり優先して、建物の構造は二の次に考えがちですが、大地震で建物が崩壊してその下敷きで死亡すれば二度と楽しい人生はないのです。
 まず、第一に建物の補強の大切さと、地震に強い住宅の知識を皆様と共に学んでいきたいと思います。

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第2回  地震はなぜ起きる 〜メカニズムを知ろう〜

 今では地震は「大ナマズ」が暴れるから、と信じる人はいませんが、江戸末期に起きた「安政の大地震」の時まで、庶民は本当にナマズの仕業と信じていました。
 明治になり西洋科学の浸透で、地震国である我が国も本格的に地震研究に取り組み始めました。しかし本当に地震のメカニズムが分かったのは、45年程前のことです。
 いま我々が立っている地面のことを地殻と言いますが、それは地球をリンゴに例えると皮よりも薄いものです。
 そこに主に花崗岩からできている大陸プレートとその下や海の下にある主に玄武岩からできている海洋プレートがあり、その地殻の下にマントルと呼ばれている地球の体積の83%からなる「かんらん岩」があります。
 地球の中心の方に、外核と呼ばれている約9000度近い鉄の溶体があり、この熱にマントルが対流を起こして海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込もうとしますが、大陸プレートが動こうとしないため力の押し合いをします。
 その押し合いが極限に達すると一気に破断、これが地震波となって地面をゆらすのです。

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第3回  地震はなぜ起きる 〜東海大地震は来るか?〜

 これから起こると言われている東海大地震は、大陸プレートと海洋プレート間の巨大地震のことで100〜150年間隔で規則的に起こるのに対し、内陸地で起こる大地震は1000年単位です。
 過去数百万年から繰り返し地震を起こしたと見られる断層を活断層と言います。日本列島はこの活断層という古傷だらけで、古傷はまた同じ所で壊れやすく、活断層の中でもこらえ性がなく少しの歪みで中位の地震を短期間に繰り返し起こしたり、長い間ぐっとこらえた末に千数年後には、大きくずれて大地震を起こすパターンがあります。
 活断層の中で長い間起こっていない所を地震空白域と言って要注意の場所です。
 活断層地震の特徴は大地の足下でしかも浅い所で起こるので、海洋地震に比べ地震の規模は小さくても、被害が大きくなります。

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第4回  震度とその被害 〜新潟県中越地震の恐怖〜

 2004年10月23日午後5時56分頃、新潟県を中心に強い地震があり川口町で震度7の激震が観測され、住宅の倒壊や土砂崩れが各地で発生しました。
 親族の安否をご心配なさった方がいらっしゃることと思います。
 この地震も、阪神・淡路地震と同じ活断層によるもので、10年以内に2度も、活断層地震が起きるのも珍しいことです。
 活断層地震の特徴は今回でも地震の規模はマグニチュード6.8とそれ程大きくはないが、震源の深さが20キロと浅いのが被害を大きくしています。
  しかも余震が頻繁に起きていて、本震から2時間以内に、震度6強が2回、6弱1回、5強2回、5弱2回と続けざまに揺れたのでは生きた心地もしないというものです。
 しかも本震から10日以上も経って新潟中越地方に震度5強の地震がありました。

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第5回  地震で壊れないために 〜建物の壁はバランスよく〜

 住宅を造るのに一番大切なことはそこに住まう家族が安心、安全で快適に暮らせることです。
 そのためには、人やものの重さに充分耐えられるのは無論のこと、雪の重さや、台風などの強風にも耐えられる上に、震度7の烈震にも倒壊しないように造らなければなりません。
 また雨漏りや水漏れは木材の腐蝕を早めるだけでなく、シロアリの格好の住処となって、家の寿命を縮めてしまいます。
 特に築年数が20年をこえる木造住宅は、基礎に鉄筋が入っていなかったり、地盤を支えるフーチンが付いていないものがあります。壁に筋交いが無いものや、あっても薄っぺらで地震の時に役に立たないものもあります。
 こういう建物でも大地震がこないと立派に建っているので厄介なものです。
 地震で壊れないためには、東西南北に耐力壁をバランスよく設けることが大切です。
 それを怠った実証例で阪神・淡路大地震の時に店鋪付き住宅や一階ガレージと玄関で道路側に壁のない建物は軒並み倒壊しています。
 一般住宅でも、南面は太陽光を家の中に充分取り入れたいためにガラス張りが多く耐力壁が少ない、反面北側は寒風を防ぐために開口部をあまり設けずに壁ばかりにしてしまうと、地震の時に南面の揺れが増幅されて壊れやすくなります。

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第6回  基礎が肝心 〜補強方法〜

 住宅で一番肝心なのは基礎です。建物の重量をしっかり支えてくれるためにも基礎をキチンとしなければなりません。ところが意外に古い建物では基礎がいい加減にできているケースが多いので困ります。
 そこで先ず建物の周囲の基礎をチェックすることから初めて下さい。
 そして以下の状態ならば耐震性のない基礎です。
  @基礎が布基礎になっていない。
  A布基礎の断面形状が長方形で底盤(フーチング)がない。
  B布基礎に鉄筋が入ってない。(特殊なセンサーを用いて調べる)
  C布基礎にひびが入っている。
  D基礎自体がしっかりした地盤の上に乗っていない。
 基礎は普段は建物の重みを支えていれば良いので、よほどの悪い地盤(例 沼地を埋め立てた所)でない限り、建物が傾いたりすることはありませんが、一度大地震が起きると@〜Dの基礎では建物を支えられなくなります。
 @の場合は柱が基礎から外れて建物が倒壊します。Aの場合は地盤で支える面が少なく、またDは地盤自体が柔らかなため基礎がめりこんでしまいます。B、Cは基礎自体が壊れてしまいます。

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第7回  土台は建物の根本 〜建物の寿命は土台の防腐処理がポイント〜

 土台は柱からくる建物の荷重を基礎に伝えるもので、基礎と同じくらい重要なものです。
 会話の中で「土台無理な話だ」と言うように、土台は「元来」とか「もともと」の意味で、その課題の根本を表しています。
 土台はコンクリートに直に触れているため下端の水切りが悪く、適度の湿気、温度により腐りなどやシロアリの絶好の巣となりやすいのです。
 シロアリは柔らかい繊維質の木を好むので、堅い繊維質の栗材や椎材等が良いが、木が暴れやすいので取り扱いが難しく、今日では桧材や米ヒバ材、またはその防腐処理材が多く用いられています。
 また基礎に直に触れないように基礎パッキン(硬質ゴム製、ステンレス製)を間に入れて、床下換気口も兼ねたものもあり、基礎自体に開口部を作らないので、丈夫な基礎となり一挙両得になります。
 木は水分を多く含むと腐朽し易く、雨漏りや浴室、台所などの水仕舞いの悪さや排水管の不具合を起こすと柱や土台がぬれて腐り易く、水まわりの防水処理を常に心掛けることが建物の寿命を保つためには必要です。
 特に土台と基礎のコンクリートの接点では水切れが悪く早く腐朽しがちです。
 腐触度の方法はマイナスドライバーを刺して表面で止まれば問題が無く、木材の断面積の20%以下の場合で7割、30%以下では五割の劣化度とみなします。
 それ以上の場合は無いに等しいので取り替える必要があります。

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第8回  建物は硬構造へと変化 〜金物を使い補強する〜

 戦前の民家の屋根は瓦葺きで重く、部屋はフスマや障子で仕切られて壁が少なく、また壁自体が土塗りのためほとんど柔構造でできていました。  建物の固有周期はかなり長く0.3〜0.5秒位で貫きによってかろうじて倒壊を免れていました。
 戦後になると日本の住宅様式が一変して、和風から洋風になりました。
 建築材料も瓦から亜鉛引カラー鉄板、セメント材を圧縮したコロニアル瓦や最近ではアルミ溶融の亜鉛合金メッキ(ガルバリュウム)鋼鈑など多種多様な軽い屋根材が使われています。
 壁は工期短縮のため、内装にはプラスターボードを用い、外装はサイディングボードを張った乾式工法が主となりました。
 しかも部屋も壁で仕切られることで壁量も多くなり、また壁も筋交いよりも、もっと強い構造用合板を用いることで建物が硬構造となり、建物の固有周期も0.24秒と鉄筋コンクリート並になってきました。
 建物が硬いと地震の時に、柱は引っ張りにも耐える必要があります。ところが柱は土台に柄で差しているだけですから簡単に引き抜かれてしまいます。従って土台から柱や筋交いが外れない様に金物でしっかりと押さえておく必要があります。
 既存の建物で土台の上に柱が載っているだけでは地震の時に建物が土台から簡単に外れてしまいますので、金物を用いてしっかりと止めましょう。また筋交いにも筋交い金物を用いて土台と柱に止まる様にしましょう。

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第9回  耐力壁とは 〜地震の揺れは壁で踏ん張る〜

 地震の揺れを電車の中の体験で表現すると、支えの構造が理解できます。
 空いた車内で足を大きく進行方向に向けて開脚すると電車の急なスピードアップ、または急停車時に脚を踏ん張って身体を支えます。
 速度を上げる時は、進行方向の後ろ脚で、停車する時は前の脚で踏ん張ります。
 混んだ電車では、脚を開くことができないので、走りはじめと停車する時に乗客は一斉に反対方向にどっと倒れんばかりに傾きます。
 柱はこのように建物の重量を支えるには良いのですが、地震や強風には耐えられません。私の家は柱を多く使っているからといっても地震に安心とはいえません。
 横からの力がかかった時に建物が倒れないように踏ん張るのが、柱と柱の間に斜めに入っている筋交いという材料です。
 この筋交いは地震や強風が起きて初めて用をなすので、普段は何の機能もしないため、ともすると安易に扱われて、形式的に入れている場合があります。
 ひどいのは貫き板を用いている場合もあります。これでは踏ん張るのに弱くてすぐに折れてしまいます。
 最低でも30o×90 oを使えば、貫きの場合の1.5倍、45o×90oを使えば2倍、90oの角材ならば3倍の強度が得られます。
 ただし上と下の端部に、大きく揺れても抜けないようにしっかりと接合金物を使うことが大切です。
 筋交いの欠点は踏ん張る方向には効果がありますが、引っ張られる方向にはあまり効き目がないことです。
 そこでどちらの方向にも効くには、構造用合板を用いて壁を固める方法があり、最近の建物の主流となっています。

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第10回  費用をかけずに耐震壁を造るには

 前回、地震に耐える壁の補強の方法で構造用合板を用いて壁を固めるやり方を紹介しました。
 この方法で補強するには、どうしても外壁を壊さなければ、土台から胴差まで出すことができないとなると、補強後の壁の仕上がりが、補強しない部分の壁と色合いが合わずに、結局、外壁全面を仕上げることになってしまい、補強工事費よりも、補修費用の方がはるかに高額となり、地震は怖いが、費用の点で諦めてしまうことになりかねません。
 内部から壁を補強できれば、仕上げがプラスターボード(石膏をある程度の厚さの板状に固めたもので、表面に紙が貼ってあり、そのまま壁や天井の下地材として用いる。耐火性があり、厚ければ耐久性も増す)の上にクロスを貼るだけですみ、外部工事より安く上がると誰しもが思うはずです。
 しかし、耐力壁として機能させるには、土台から胴差までが一体とならなければ駄目で、床を剥ぎ、天井も剥がないと工事ができません。これでは外壁を壊すのと五十歩百歩です。
 そこで図のように内側に材を廻して、それに構造用合板を取り付けることによって、床も天井も壊さずに施工できます。
 強度は若干下がりますが、その分補強部分を増やせば良いわけで、費用は安価となり、直壁にも充分適応できる利点もあります。

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第11回  今日の木造住宅耐震補強の現状

 年齢を重ねた腕の良い大工さんは、今の住宅にやたら金物が付いているのを苦々しく見つめながら「俺の建てた家は金物なぞ使わなくても大地震でもびくともしなかった」と豪語しますが、関東の大地震は82年前の関東大震災以来起きていませんから信用できません。
 住宅の構造も年々改良され、在来軸組工法と言われている柱梁による住宅も、各地で大地震が起きる毎に、揺れながら地震力を逃がす方法から、踏んばって地震力に抵抗する方法に変わってきました。
 なぜかと言うと、揺れながら地震力を逃がそうとしても、建物の揺れが地震の揺れと周期が合うと、丁度ブランコの乗り手と後ろで押す人の力が加わると揺れが大きくなるように、建物の揺れが増幅されて倒壊する危険が大きくなることが分かったからです。
 そこで木造住宅もビルなみにガチガチに固めてしまい、地震の力はもろに受けるけれども、倒壊だけは免れて命だけは助かるようにしようというのが、今日の木造住宅の耐震に対する考え方です(その他に免震工法、制震工法というのがあります)。
 このように地震力を建物の抵抗で受け止めるためには基礎と土台、土台と柱、柱と梁、横力に抵抗する筋交い、構造壁などの接合部分が簡単にはずれないようにしっかりと繋ぎ止めておく必要があります。この役目を金物でやろうということで、あくまで建物を倒壊から守るのは木材なのです。
 このような耐震の補強金物の使用を当初国土交通省は特定建物(不特定多数が利用する建物で劇場、診療所、旅館、アパート、学校等をいう)のみに適用していましたが、平成16年7月より、住宅にも広げて適用されることになりました。

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第12回  接合金物は認定品を使おう

 金物が粗悪品であれば木材を繋ぎ止める機能が十分発揮できません。(財)日本住宅・木材センター(以下住木センター)では品質・性能及び生産供給体制を持つ工場であるか厳密な審査をして、合格をしたものにのみ認定しています。
 金物の開発は昭和53年に住木センターがおこない、主に住宅金融公庫の「木造住宅工事共通仕様書」に記載されたのが始まりです。
 先般、不良ビスを多量に販売した[兼松日産農林]が、認定証を偽造して、それを使用した住宅メーカーが多量の不良住宅を作ったことになり、社会問題になったのは記憶に新しいことです。それだけにこの認定は厳しいものです。
 認定品は「軸組工法用金物規格」に適合する接合金物をZマーク表示金物として54種類、「2×4工法用金物規格」に適合する接合金物をCマーク表示金物として34種類からなり、一つ一つに記号が付けられていて設計図書にも書き込めるようになっています。
 マークの表示は金物に刻まれています、ビスなど細かいものにはケースに記されています。
 その後、金物メーカーが工事現場で作業しやすく、納まりも良くて性能もZ・Cマーク同等の製品、又は亜鉛メッキ鋼板より錆も出ないで丈夫なステンレス製金物を住木センターが同等認定と認めた金物はZの所にDを入れ、金物メーカーが独自で開発したオリジナル製品を住木センターが性能認定した金物はZの所にSの表示を入れてあります。
 金物を使用するときは必ず認定品の有無を確かめてから用いてください。

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第13回  地震に備える家屋の3構造

 耐震構造というのは地震力に対して耐えられる力を持つことを言います。だから地震力が大きければそれに比例して建物自体をガチガチに固めてしまおうというのです。
 それに対して地震で地盤が揺れても建物が揺れないような構造にするシステムが免震構造です。
 建物は基礎の上に乗せますが、基礎と建物を繋げないで遊ばせておく工法です。その方法とは皿の上にボールを置いてその上に建物を乗せれば下の皿が動いても建物は動かないというシステムなのです。大きな地震でも建物の揺れがほとんど無いので、家具が倒れたり食器が飛んだりしませんから、怪我の心配もありません。
 制震構造とは自動車の車輪と車体の間にバネを入れて、路面からの衝撃を車体に伝わりにくくなっているように、様ざまなサスペンションを用いて地盤からの揺れを吸収させて建物の揺れを少なくする工法です。
 耐震構造は既存建物にも割合安くできますが、免震構造は既存建物に適応させようとすると建物を寄せるか上げるかして基礎を作りその上に免震材を取り付けた後、建物を元に戻す工事になり、費用も日数も掛かり、立て直したほうが早いので新築向けです。
 制震構造は耐震構造と免震構造の中間位の費用です。

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